ヤマブシタケ栽培の巻


国内での自然発生も珍しいと言われていますが、実は栽培が可能なキノコです。
キノコなのにキノコらしくないこの形は印象が強く、一度知ったら忘れる事が無いかも知れません。
ただ栽培についてはシイタケやナメコとは違い、発生までの作業において少々難しい方法が要求されます。
ヤマブシタケの栽培においては、これと言って確実な栽培方法は確立されておらず、かなりの試行錯誤の末に自分なりの栽培方法を独自に編み出してしまいました。



深山においては、ブナの高い位置の木が枯れた部分に発生しているのが見られるそうです。

栽培においては、コナラや樫が利用できるので、わしはコナラを利用しています。経験上判った事なのですが、太い原木を使う事によって立派で大きなキノコが発生するように思われます。
なるべく大きいキノコを発生させたいので、比較的太い原木を利用しています。

玉切りまでの作業はきつい肉体労働を伴います。













自然界の中でも発生は少なく、見つけるのが困難なキノコというのは、自然界の中で生き残る力が弱いと言う事です。
菌の世界は場所取り合戦なので、これから接種しようとする原木に他の雑菌類が付着していては、良く有りません。その為に原木内を人為的に殺菌してやる必要が有ります。

わしの場合場所に恵まれて居るので、ドラム缶を用いて殺菌しています。








殺菌が終了した後、一晩栽培袋の中で冷却した原木に種菌を接種します。

その前に自分で簡易クリーンルームを作っておきます。その中と接種に使用する器具は全てアルコールで消毒しておきます。
もちろん自分自身も直前に入浴を済ませ、真新しい消毒した合羽等を着用し、マスクやゴム手袋も着用して肌や髪が露出しないようにしてから入室します。

そして消毒済みのボールに種菌を掻き出し終わったら、培養袋を開け、中の殺菌済み原木に早急に接種します。接種を済ませたら早急に袋の口を折って止めます。
このように、雑菌の混入が無いように常に注意をします。








毎日の温度・湿度の管理が必要となります。最初から高温で管理するのは危険なので、初めは摂氏15度、湿度80%から管理して、菌糸の成長の様子を見ながら徐々に培養温度を上げて行きます。

木口が菌糸で白くなって来るのは大体二週間から三週間かかりますが、この時に殺菌が上手くできたかどうかと言う事もはっきり判ります。ヤマブシタケの菌糸が増えるのと同様に雑菌類も顔を出し始めるからです。
このようにヤマブシタケ栽培は雑菌混入には細心の注意が必要なのですが、巷では殺菌不良で挫折する場合が多いようです。

ホダ木になるまで大切に管理し続けます。
菌糸膜で原木全体が覆われるまでは気を抜く事が出来ませんが、完熟ホダ木になってしまえば、後はもうキノコが出るのを待つばかりです。









菌糸膜で真っ白に覆われてホダ木になった原木を雑木林の中に本伏せします。

ヤマブシタケは高い所から発生すると言う特徴が有る事から、ホダ木を地上から半分位出して埋めれば良いと思いましたが、それでは折角出来たホダ木が乾燥しすぎてしまいます。
そこで、ホダ木を四分の一だけ地上から出すだけで埋設してみましたが、ちゃんとキノコを形成する事が分かりました。













地際や上面から発生を開始したヤマブシタケは鮮やかな桃色ですが、どんどん上方に成長して行き、その後ヤマブシタケ最大の特徴で有る、白い針を形成し始めます。

不思議なもので、その針は垂れ下がる時、地面に接するかしないかのギリギリの所で伸長を止めます。
キノコを形成する前から自分の将来の姿が分かって居るのかも知れません。














ホダ木になるまでは,わしが栽培している他のキノコよりもかなりの神経を使いますが、目に見えて菌糸の成長が分かるので楽しい栽培でも有ります。










                  2007年 ヤマブシタケ栽培日記








1月18日培養棚を設置した。











2月上旬

昨年までの培養方法を少し変更をしましたので、今年はその違いや菌糸の成長の様子を毎日観察しています。

今年は壁いっぱいに棚を作りましたので、上下・高さにおける環境の違い等に興味がありますし、この室内においてどの様な過程が見られるのかが楽しみです。

画像は今年接種してから培養25日の様子ですが、なかなか順調な様子です(・∀・)b!







2月中旬

分解水が少しづつ出て来ました。

この分解水とは菌が培地や原木に伸長し、それを分解し始めると生じてくる現象で、それだけ菌が元気であり、原木の養分を吸収しているという目安になります。

培養中に発生されるこの分解水の量で完熟ホダ木になったかどうかを判断します。

見た目で菌糸膜が原木の表面を覆ったから完熟・蔓延したというわけではありません。

菌糸膜を形成するよりも、分解水の大量排出の方が重要な目安と考えています。







培養開始から約2ヶ月目

この様に多くの分解水が出てきました。上記のように菌糸膜で覆われて来るよりも分解水が出て来る方が、原木の中に早く菌糸が侵入して材を分解する「勢い」が感じられます。












接種は原木の木口上面にしますが、その際に周囲にこぼれた少しの種菌から底一面に菌糸膜を形成して、原木内に上下から侵入していると思われます。