マイタケは、とても生命力が弱い菌です。
栽培しているとその脆弱さは、良く理解できます。菌糸の伸長が遅く、ホダ木になるのが遅いのです。
しかも、カビ類にも弱いのです。
自然界での発生が少なく、「幻の深山のキノコ」である原因はここにあると思います。
そんなマイタケを原木で栽培した記録をここに記したいと思います。
マイタケの原木栽培に使用する原木はコナラで、12〜18cmの太さのものを使用します。
太ければ太いほど長年キノコを発生させてくれます。
ミズナラ原木を入手出来れば最高なのですが、なかなか入手は困難です。
マイタケを栽培する上で一番怖いのは、カビ・害菌の侵入です。
ですので、ヤマブシタケと同様にドラム缶等を使って原木を殺菌しなくてはなりません。
とても生命力が脆弱なため殺菌はとても大事な作業であり、人間が完熟ホダ木になるまできちんと面倒を見てやらなくてはなりません。
原木マイタケ栽培に挑戦しようとする大体の方が、ここで壁に当たるのではないでしょうか。
殺菌が完了したら清潔な場所で冷却します。
殺菌作業によって暖められた原木の熱が20度まで冷却されるまで、大体一晩くらいかかります。
冷却されたかどうかを良く確認してから、接種作業に入ります。
この時、使用する器具、衣服等を良く消毒しておく必要があります。
そして種菌を殺菌消毒したボールに掻き出して、そこから原木の木口に種菌をふりかけます。
培養もとても大事な作業ですが、こちらは作業と言うよりも温・湿度の細かい管理が必要です。
培養温度が高すぎるとカビ菌等の空中浮遊菌類が、フィルターを通過して侵入しようとしたりしますし、万が一殺菌不良だった場合、あっという間に雑菌類にやられてしまいます。
そして、原木が菌糸膜で覆われて来るまでの4〜5ヶ月間、しっかりと培養・管理をしなくてはなりません。
4〜5ヶ月間培養し、完熟したホダ木を地面に埋め込んで、秋の発生まで原木を乾かないように伏せ込みます。
一回埋め込んでしまったら掘り出す事を原則としてしないので、将来大きなマイタケの発生を期待して原木同士をくっつけて埋め込んでいます。
他のキノコの伏せ込みと違って、ホダ木を全部埋め込んで木口の上3cmくらい土が被るようにします。
そして発生して来る秋まで地面を乾燥させない様に管理します。
日によっては暑さがまだ残る10月初旬に発生を開始し…
10月中旬に収穫期を迎えます。
この時、また管理が必要で、発生中、雨が降ると細かく分岐した「へら」状のキノコの間に泥はねが生じたりします。
ですので発生が開始されたらその周辺に切り藁、落ち葉等を撒き泥はねを防止すると同時にその上に屋根をかけます。
収穫を終えたらまたその屋根を外します。
『舞茸〜天然物と、原木栽培物と〜』
原木で栽培されたマイタケの、その味と香りの素晴らしさ、歯切れの良さは菌床栽培物(おが屑栽培)と比較にならない程全く別物です。しかし残念ながら、市販品の約100%がおが屑による栽培です。
天然物にもなかなかお目に掛かる機会は無いのですが、以前群馬の山地で天然物を購入し食しました。原木栽培物とあまり変わらないと思いました。
こうして天然物を食べる機会が有ると、やはり原木栽培したキノコは、天然物と同等かそれ以上の味・香りなのだと、改めて思い知らされます。
しかし、栽培は完熟ホダ化するまでがヤマブシタケ同様極めて困難で、菌糸伸長に最適な温度がカビ類や害菌類と全く同じなので一時も気を抜くことが出来ません。
わしが栽培している場所は地域的に温暖なので雑菌類は、かなり怖い存在ですね。
マイタケは、自然の中で見つけると舞い踊りたくなるほどに嬉しいと言う事から「舞茸」と名付けられたと聞きますが、栽培も苦労が多い事もあって、キノコが発生してくれると成功したという喜びから舞い踊りたくなるほど嬉しいものです。
まさしく「舞茸」だと思います。